上海花影

香港返還に揺れる時代、舞台は上海。
六道商会の構成員である暁雨は、兄貴分の龍鳳に呼ばれ、フランス華僑・夕月の訳員（通訳者）として案内人を務めることになった。

六道商会の幹部である龍鳳は、幇主（ボス）の娘・麗春花の恋人であり、次期幇主と見なされている。
龍鳳の庇護下にある『桃苑酒家』の主人・翡翠。そして翡翠が面倒を見ている下働きの狼。狼は麗春花に想いを寄せており、麗春花も龍鳳と狼の間で心が揺れていた。

やがて暁雨は、龍鳳から「虞美人」という不穏な存在の話を聞かされる。古代中国に散った、楚王項羽の愛姫・虞美人(ぐびじん)。
彼女の血から咲いた赤い花を、人々は虞美人と呼ぶようになった。六道商会を揺るがす花、「虞美人」とは一体誰なのか。

花影（かえい）とは、月明かりが落とす花の影。
時代に揺れる上海の夜に、花の影が落ちる。